「非常用電源」というと、以前は大病院や大きなオフィスビルだけが備
える特別な設備でした。
しかし東日本大震災以降、事業継続計画(BCP)の一環として自前の電源を
導入する企業が増えています。
電力なくしては、最低限の事業継続能力も従業員の安全確保もあり得な
いことを学んだからです。
今回、東京とその周辺のビジネスエリアは交通機関のマヒや計画停電な
どかつてない経験をしました。
しかし将来に備えるための教訓は、地震の直撃を受けた東北地方の経験に
こそあります。
大停電ブラックアウト440万件の復旧-東北電力の記録から
管内すべての原子力、火力、地熱発電所が停止
2011年3月11日14時46分、宮城県沖の海底を震源とする東北地方太平洋沖地震が発生。

その直後、東北電力の女川原子力発電所の3つの原子炉が自動停止したほか、八戸、能代、秋田、仙台、新仙台、原町の管内6か所の火力発電所もすべて自動または手動で停止。3か所の地熱発電所も同様。
この結果、青森・岩手・秋田の3県全域、宮城・山形両県ほぼ全域、福島・新潟両県の一部が停電。440万件に及ぶブラックアウト(大規模停電)です。
15時10分過ぎから大津波が東北太平洋沿岸各地に襲来し、東京電力の福島第一原子力発電所を破壊しました。
この日、宮城県の日没は17時35分。仙台市の気温、約1℃。
18時25分、陸上自衛隊27が被災地で救援活動を開始。
地震発生6時間後の21時現在、停電件数は推定で440万件。
「現在、停電の復旧に向け、懸命に設備被害、停電状況等の確認を行っておりますが、
被害規模が甚大であり、復旧時期等を見通すことが困難な状況」(東北電力の「緊急情報」から)。
仙台市の気温、約0℃

地震発生18時間後、復旧率5%未満
3月12日5時54分日の出。仙台市の最低気温は約-1℃。
その後、秋田火力発電所の2号機が稼働を再開。
9時現在(地震発生後約18時間)、停電の復旧率5%未満。
地震発生からまる一日経た15時現在、停電件数は約385万件に減少。
21時現在(地震発生後約30時間)までに約48%が回復。
同時刻頃までに陸上自衛隊がパン5万食の輸送を実施。
8割復旧には72時間以上
その後復旧の進捗が鈍り、翌13日15時現在(地震発生後約48時間)、復旧率約64%。
翌14日11時、自衛隊に大規模震災災害派遣の実施に関する行動命令発令。
10万人規模の災害派遣開始。
15時現在(地震発生後約72時間)、停電件数が初めて100万件を下回り、
停電復旧率は約78%に達しました。

結論:必要な電力は30~72時間分

東日本大震災の直後、地震の直撃を受けた東北電力管内では440万件の停電が発生し、
その8割が復旧するまでに72時間以上を要しました。
比較的に停電件数の少なかった阪神淡路大震災の時には、
関西電力管内の停電約260万件のうち、
95%以上が3日間で復旧しました。
http://www1.kepco.co.jp/kyousei/more/days/
東京都が出した直下型地震の被害想定においても停電件数の概ね7割復旧を4日後と想定しています。
http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/knowledge/pdf/h18choka/hon5.pdf(PDF:2.14MB)
これらを勘案すると、大規模災害が発生したのち72時間(3日間)は
電力供給がないことを想定して対策を講じるのが理想的だと考えられます。
また、東日本大震災で復旧率がほぼ5割に達したのが30時間後だったこと
も考え合わせると、現実的には30~72時間の準備が必要と考えられます。
非常用電源の「落とし穴」
UPS(無停電電源装置)があるから大丈夫?

UPSとは、商用電力が停電したとき、瞬時に内蔵バッテリーに切り換えて電力を供給する装置です。
IT機器などが停電によって突然停止して故障するのを防ぐことを主な目的に作られています。
しかし機器を安全に停止することが目的なので、内蔵バッテリーの容量は限定的です。機種と使い方によりますが、数分から数十分しか持たない場合がほとんどです。
UPSだけで業務を継続するのは非常に困難なのです。
測っておどろく消費電力量

業務でどれくらいの電力を使用しているか、普段から把握されている方は多くありません。
計算したり、実際に測ってみたりすると、意外に多いことに驚かれるはずです。
イメージだけで決めてしまうと、いざという時にまったく足りないという事態になりかねません。
逆に過大な設備投資も当然に避けるべきですから、非常用電源の導入にあたっては、必要電力量の算定が重要なポイントになります。
「寿命」にとらわれ過ぎると損をする
蓄電池の寿命を決める大きな要因は、充放電の繰り返しの回数です。
蓄電池の大切な性能の一つですが、非常用電源の使い方を考えると、
もっと重要なことは蓄電容量です。
いつ電力供給が復旧するか判らない状況で使用するのですから、
蓄電量が少しでも多いのに越したことはありません。
同じ金額であれば、充放電回数にこだわり過ぎるよりも蓄電量を増やす
ことに投じる方が賢明です。


