
家庭、事務所、店舗、病院・診療所などの非常用電源、太陽光発電(ソーラーパネル)や風力発電で得た自然エネルギーの蓄電システムが増えています。
用途や使用条件によってさまざま。
いちばん適した非常用電源・家庭用蓄電池を
選択をするためのガイドです。
使い方を具体的にイメージする
最初のステップは、非常用電源・家庭用蓄電池をどんな目的で使うのか、それはどんな状況なのか、できるだけ具体的なイメージを持つことです。プランニングを進めていく途中で、無駄に迷うことのないようにするためです。
関係者と共有したり、後で見返したりすることができるように、文書化しておくのがよいでしょう。
具体化のポイント
1.いちばん大切な目的は何か?
(例)非常時にもお客さまに対して最低限のサービスはご提供できるようにする。
非常用電源・家庭用蓄電池の使い道はいろいろに考えられますが、中でもいちばん大切な目的を簡潔にまとめます。これがプランニングの出発点です。
2.どんな状況で使うのか?
(例)東日本大震災クラスの自然災害で、大規模停電に遭遇したとき。
将来の事象を正確に想定することはできませんが、過去の事例などに引き合わせて状況をできるだけ具体的に描くことが必要です。
大規模災害を想定する場合、停電がどれくらい続くのかが問題になります。東日本大震災の教訓については、こちらを参考にして下さい。
使用状況がイメージされると、そこで必要になること(上記の例では、大規模災害時に求められる「最低限のサービス」の範囲・水準)がある程度見えてきます。
3.何を使うのか?
目的と使用状況が定まったら、さらに具体化を進めます。
どの機器・設備をどれくらい使うのか、それぞれの台数と時間を列挙していきます。
ここから先のステップには、専用の電力計算ツールを使うと便利ですので、そこに使用予定機器・設備、台数、時間を入力していきます。

必要な電力量を計算する
消費電力を調べる
電力(W ワット)×時間(h 時)=電力量(Wh ワット時)となります。
電気機器・設備によってどれだけの電力を必要とするか異なりますので、正確にはひとつひとつ調べる必要があります。
上手な調べ方
1.消費電力の目安
ただし、小さな機器などは大きな影響を与えないので、目安の数値を使うのでも構わないでしょう。当サイトの電力計算ツールには、主な機器・設備の目安の消費電力がデフォルトで入っています。
2.仕様書の数値をみる
機器・設備自体や取扱説明書に消費電力が明記されている場合があります。
エアコンなどの場合、最大値と平均値が示されている場合があります。どちらを使うべきかは、その機器・設備の使い方によって変わります。詳しくは後述します。
パソコンなどの電源コンバータに記載されたInput、Outputの数値も参考になりますが、電圧(V ボルト)×電流(A アンペア)という表示になっていることに注意が必要です。電圧(V ボルト)×電流(A アンペア)=電力(W ワット)です。
Input(入力=電源側)は交流で100Vから240Vまで対応できるようになっているものがありますので、何ボルトに対して何アンペアなのかを確認して計算してください。Output(出力=機器側)は直流で、こちらも機器毎に電圧が異なります。
3.実際の消費電力を計測する
消費電力の大きいものや、小さくても多数ある場合には、必要蓄電量に大きな影響を与える可能性があるので、専用の測定器で消費量を実測しておくことをお勧めします。
理想的には非常時を想定した連続測定ですが、費用と時間がかかり過ぎるとコストパフォーマンスが吊り合わなくなります。
そこで現実的な方法は、消費電力が大きく異なる(1)始動時、(2)待機時、(3)稼働時の数値を機器・設備毎に計測するというものです。これならば測定器1台と担当者が1日程度を費やすだけで、主な機器・設備のデータを得ることが可能です。
4.常時使用か一時使用か
使用する機器・設備毎の消費電力に使用時間を掛けると必要な電力量を求めることができます。
但し、常時使用する(つけっぱなし)のか、一時使用する(ときどき使う)のかで、この先の計算に与える影響が異なります。
常時使用する機器・設備とは、例えばサーバのように、いつも電源を入れっぱなしにして稼働させておく必要があるものです。一方、一時使用とは、例えばコピー機のように、常時スイッチを入れておく必要はない、あるいはそうしておいても小さな待機電力しか消費しないものです。
前述の仕様書上の消費電力ですが、常時使用の場合には平均値に近くなると考えられますので、そちらを使用します。一方、一時使用の場合、負荷のかかる始動時の割合が高くなりますので、最高値を使った方が無難です。
常時使用か一時使用かは、後述する蓄電容量や必要出力の計算にも影響を与えます。

蓄電容量に換算する
必要な電力量≠必要な蓄電容量
あまり知られていないことですが、蓄電池には、負荷が大きいほど引き出せる電力量が小さくなるという特性があります。
つまり、ある消費電力(W ワット)の機器を接続して10時間動かせる蓄電池に、その倍の消費電力の機器をつないだ場合、稼働させることができる時間は半分の5時間を下回ります。逆も同じで、消費電力が半分の機器であれば20時間を大きく超えて稼働させることができます。
このような特性を踏まえると、必要な蓄電容量を計算するときには、蓄電池にかかる負荷がどのように変動するかを考慮に入れる必要があるのです。
非常用電源・家庭用蓄電池の仕様書に記載された容量は、一定の条件下で使用した場合の数値ですから、上記の計算をしないと、実際には大きな過不足が生じる恐れがあり、注意が必要です。
負荷と実質的な蓄電容量との相関グラフは、蓄電池の種類によって異なりますので、その点にも注意が必要です。あんしん電源については、電力計算ツールに実測に基づく係数を組み込んであります。

必要な出力を計算する
蓄電容量の次に考えるべき性能は、出力です。出力もW ワットで表されます。
機器・設備側が消費する電力を出すチカラが、非常用電源・家庭用蓄電池に必要です。
一定の時間だけならば出せるチカラが「最大出力」、連続して出せるチカラが「連続出力」で、当然のことながら後者がより重要です。
連続出力は、同時に使用する機器・設備の消費電力の合計以上である必要があります。
ただし、連続出力を高めるにはかなりのコストがかかりますので、必要十分な線を見極めることが大切です。
例えば、コピー機も電子レンジも使いたいという場合、消費電力を単純に合計してしまうと必要な連続出力はとても大きくなってしまいますが、二つを同時に使う必然性はないはずです。それならば、どちらか大きい方だけを必要な連続出力の計算に入れればよいことになります。
一方、サーバのように常時稼働させる機器の消費電力は常に計算に入れておかなければなりません。

出力波形と自動切換機能を考える
交流電力は一定の範囲で電圧がプラスとマイナスの間を変動しています。この変動の周期が「周波数」で、東日本では50Hz(ヘルツ)、西日本では60Hz(ヘルツ)が使われています。
発電所から送られる電気は、正弦波(サイン波)という形を描いて電圧が変動していますが、電源機器の中には、別の形状(矩形波、疑似正弦波など)で出力するものがあります。
多くの電気機器はそれでも問題なく稼働しますが、精密機器などの中には正弦波での入力を前提にしているものがありますので、注意が必要です。
一般に正弦波出力の方が高価ですから、コストか品質かを比較検討することになります。
無人のときの停電をどうするか
非常用電源・家庭用蓄電池には、自動切換機能を備えているものがあります。自動切換機能とは、通常は商用電力(電力会社から供給される電気)を使い、それが停電した場合に自動的に電源を蓄電池に切り換える機能です。
これがあると、例えば夜間・休日、無人のオフィスで停電が発生したときにも、サーバなど止めたくない機器を稼働させ続けることができます。また、昼間でもUPS(いわゆる「無停電電源装置」)のバッテリーは数分程度しか持続しない場合も多いので、必ずしも機敏な対処ができない場合には、備えておくと安心な機能です。
一方で、そのような必要性がない場合(例えば一般家庭における非常用電源)には、敢えてこだわることはない機能でもあります。

もう一度、プランを見直す
ここまで来ると、具体的な候補が見えてきました。しかし、「当初考えていたものとはだいぶ違う」という感覚をもつ方も多いでしょう。この手のプランニングでは、最初の計算は想定以上に高くなってしまうものです。
仮に出来上がったプランを手直しすることにより、完成度を高めます。
プランの見直し手順
1.計算入力数値を見直す
特に消費電力、常時・一時の使用区分を間違えると計算結果が大きく違ってくることがありますので、エラーがないか再確認をします。
2.使用機器・設備を見直す
「あれも使うかもしれない」という意識でリストに入れたものはありませんか。使う可能性がないとは言えませんが、それらをすべて使う可能性は低いはずです。計算に入れるのは、それらのうち一つだけでよいかも知れません。
同じ機器は1台で済ませることはできないでしょうか。また、必要以上に長い時間使用する想定になっていないでしょうか。最初に定めた目的に沿って、本当に必要不可欠なものなのかという視点で見直します。



