
村沢先生にはサステイナビリティ(社会の持続可能性)の専門家として、また世界の電気自動車業界に通じていらっしゃるお立場から、藤崎さんには消費者の感性に訴える広告宣伝のプロとしてのお立場から、コンバートEVについて語って頂きました。まずは村沢先生に試乗車K1.0(通称「ケロちゃん」)のハンドルをお願いして、電気自動車は初めてという藤崎さんと共にキャンパス内を一走り。
藤崎 意外と加速が滑らかなんですね。
村沢 そうです。モーターの特性として回転数が低い時ほど力が強い。
このクルマはベーシックモデルですから、ついているモーターは定格で6Kwと小さい。
それでもかなりのものでしょう。
藤崎 今までのクルマとちょっと違うんだろうなという心理的な障壁があったのですけれど、
実際に乗ってみるとほとんど感じませんね。
村沢 私は、慣れていないときに、スイッチを入れても何も音がしないのに戸惑いました。
藤崎 ああ、ブルンッてならない。
村沢 このあと、どうしたら走るの?ってなる。ただアクセルを踏めば走るのですけれどね。
ま、2-3回乗れば慣れますよ。
藤崎 隣に乗る分には最初から違和感ありません。
むしろ一時停止したとき静かだなぁと感じますね。
村沢 モーターはアイドリングの必要がないから、クルマが止まる時には完全に停止します。
そして発進するときには、最初から最大トルクを得られる。だからギアチェンジもほとんど必要ないのです。
藤崎 ほんとだ。
止まったり走り出したりしていますね。
村沢 今はセカンド(2速)固定で走っています。
このまま止まれますし、トルクがあるから平坦ならばセカンドでもサードでも発進できます。
藤崎 電気自動車って、何となく脆弱で都会でしか使えないイメージがありましたけれど、
パワーは充分で違和感ありませんでしたよ。


村沢 このクルマは、2-30キロまでの加速がいいね。
古谷 街乗りに適するようにしています。
出力の大きなモーターを積めばもっとパワーは出ますが、
バッテリーも大きくする必要があります。
航続距離やコストとのバランスを考えてこの設定にしています。
藤崎 静かなのにも感動しました。排気ガスもゼロだし。
古谷 乗り慣れてくると、それが当たり前に感じてきます。
村沢 21世紀の価値観は変わってきていますよ。
あそこに何百万円もするクルマが止まっていますが、
あれで排気ガスをまき散らして走るよりも、
百万円でケロちゃんを選ぶ方がスマートだという時代になります。
古谷 タバコに対する社会の意識が変わったように、
クルマの排気ガスや騒音に対する意識も変わるかも知れません。
藤崎 環境への関心や周囲への気遣いがあって、
それを上手に生活に取り入れられる人がカッコいいという方向に。
村沢 コンバートEVはガソリン車の車体を活かして
リユースするという点でも環境に配慮することになるのです。
藤崎 「エコ活動」というと、以前は極端な考え方の人たちが中心で近寄りにくいイメージがありましたが、
最近は少し洗練されてきました。
古谷 コンバートEVも一緒で、今まではマニアックな趣味の世界だったと思います。
それをふつうの方が選択できる商品としてご提供するのが当社の仕事です。
藤崎 クルマを所有する喜びとか、F1のようなスポーツ性も追求され続けるのでしょうが、
クルマの価値基準は多様になっていきますね。
藤崎 ところで、電気自動車の環境貢献について質問があります。
電気自動車は確かに走る時にはCO2を出しませんが、
その電気はどうやって作っているのかという問題がありますよね。
日本の電力の6割が石油や石炭を燃やす火力発電と聞きましたが。

古谷 そのとおりです。
しかし火力発電で排出されるCO2を含めて計算しても、
電気自動車ならば同型のガソリンエンジン車の
3分の1で済むことになります。
村沢 私の専門は「サステイナビリティー(社会の持続可能性)」
ですが、太陽光発電と電気自動車とをセットで
提唱しています。
電気を作る方は太陽光発電を増やし、
使う方は電気自動車に切替えるのです。
そうすれば日本のCO2排出量を50%程度削減でき、
民主党案の「2050年までに80%削減」も視野に入ってきます。
古谷 環境対策としての電気自動車、特にコンバートEVには際立った魅力があります。
それは、「ひとつ換えればひとつ良くなる」ということです。
藤崎 へえ。つまり?
古谷 環境活動では多くの場合、個々の努力がそのまま結果に繋がるとは限りません。
例えば、小まめに電気のスイッチを切ることは大切ですが、
発電所の稼働状況が変わらない限りCO2排出量は減りません。
藤崎 なるほど。自分だけの努力では結果に届かない。
古谷 一方、ガソリン車のオーナーが自分のクルマからエンジンを降ろし、モーターに
換えれば、今まで排出していたCO2を確実に減らすことができます。
個々人の意思と行動が直接地球環境に効果を発揮するのです。
藤崎 そういうことを丁寧に伝えることが大切ですね。
消費者は賢いから、しっかり説明すれば必ず理解を得られます。
古谷 効果は量的にも大きいのです。
軽自動車で月に1,000Km走るとすると、
CO2排出量は年間約1,080Kg減らせます。
クールビズ、ウォームビズで室温を1℃調整する場合のエアコン30台分以上になるのです。
藤崎 もう一つ、コンバートEVで気になるのは安全性です。
村沢 電池が発火するのではないかと心配する人がよくいます。
一つ言えるのは、揮発性のガソリンをたくさん積んだクルマと比較すれば、
発火の危険性は相当に低いということです。
古谷 このクルマは96Vの電圧を使っています。家庭用の電源とほぼ同じ
です。当然のことながら絶縁対策を施していますし、万が一ショート
(短絡)が生じたときには瞬時に切れるようになっています。しかし
安全対策に終わりはないので、更なる研究を続けていきます。
村沢 コンバートEVの利点の一つなのですが、モーターなど一部を除いて
元からある自動車をそのまま使っているから、そこに信頼をおけるということもあるかな。
古谷 はい。当社のコンバートEVでは、元からあるものはできるだけそのままにして
使います。それが低コストで電気自動車を作れる理由でもあるのですが。
藤崎 なるほど。コンバートEVの仕組みをしっかりと知ってもらう必要がありますね。
村沢 もっとパワーのある凄いモデルも出すでしょ?
古谷 今のベーシックモデルとは別に、上級モデルを予定しています。
リチウムイオン電池については価格とのバランスを検討中です。
藤崎 クーラーは絶対必要です。
古谷 そうですよね。標準対応できるように努力しています。
村沢 電気自動車は、ハイテクではない技術の組み合わせで作られます。
その組み合わせ方が21世紀型のイノベーションと言えるでしょう。
また、モーターはエンジンに比べて機械工学的には簡単な構造です。
クルマ全体に占める相対的な価値のシフトが起きるでしょう。
そこに後発企業のビジネスチャンスが生まれています。
100ゼロの発展を期待しています。
藤崎 今日はクルマに対する考え方が変わる瞬間がありました。
昔の馬車は職人の手作りで、ユーザーの希望を入れてカスタマイズされていたそうです。
電気自動車が主流になってまたカスタマイズが当たり前になりそうで、
商品として面白くなってきそうです。

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村沢 義久 1948年徳島県生まれ。 東京大学大学院工学系研究科修了、スタンフォード大学でMBA取得。ゴールドマン・サックス証券バイスプレジデントなどを経て、2005年より東京大学特任教授、10年より東京大学総長室アドバイザー。 著書に『日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命』(文春新書)、『電気自動車-「燃やさない文明」への大転換』(ちくまプリマー新書)、『電気自動車 市場を制する小企業群』(毎日新聞社)などがある。 |
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藤崎 麻衣 多摩美術大学卒業。 アートディレクター、mg(ミリグラム)代表として、消費者向け商品・サービスの広告制作を手掛ける傍ら、「価値ある仕事・価値ある買い物」をキーワードに、製品やサービスに埋め込まれた技術やこだわりの価値を最終消費者に伝達するための文筆活動を行う。 2007年より無垢家具ブランド「Denn Style(デンスタイル)」ネットショップ http://www.denn-style.jp/ を立ち上げ、商品企画・販売も行っている。 |
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古谷 文太 1965年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。 (株)間組(総合建設業)を経てコカ・コーラに転じ、2005年、コカ・コーラナショナルビバレッジ(株)のCFOに就任。サプライチェーンの再構築を主導し、4年間で1,000億円超の合理化を実現。2008年、(株)百家堂を設立して代表取締役社長に就任。技術経営学修士(早稲田大学)。米国公認会計士。日本ベンチャー学会会員。 |

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